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鶏頭の花

メイプル日記とはかけ離れた内容が多くてすいません><








 あれは私の祖母の家が埼玉に引っ越してくる前でしたから私がまだ小学生のときの話です。私の両親は共働きで、長い休み(夏休みや冬休み、ゴールデンウィークまで)母方の祖母の家に預けられていました。祖母の家は、山の中のかなりの田舎。私と同世代の人もいなかったし、祖母も頑固な堅物おばあちゃんで私と遊んでくれることはありませんでした。

 そんな祖母の家でしたが、ひとつだけ私は祖母の家にいく楽しみがありました。祖母の家で飼っている鶏と遊ぶことです。その鶏は雌だったので卵用に祖母が飼っていたものでした。私はその鶏と遊ぶことを小学2年生の冬休みに覚えました。もちろん相手は犬や猫と違ってこちらが呼びかけて私のほうにくるようなかわいいものではありません。しかし部屋の中でつまらないテレビを見てごろごろしているよりは、補修されていない泥道を鶏と駆け回るほうが遥かに私には楽しいものでした。

 私はその鶏を、そのまま「にわとり」とよんでいましたが、だんだん省略されて「にわ」と呼ぶようになっていきました。「にわ」のおかげでつまらない祖母の家が私にとってとても魅力的なものにかわりました。

 小学校4年生のときの夏休みんことです。私の気のせいかも知れませんが、「にわ」は私が名前を呼べばこっちにくるようになりました。偶然かも知れません。私が祖母の家にくる度に「にわ」に手渡しでエサをあげていたせいかも知れません。なんにせよ、私は「にわ」を兄弟のように思っていました。私にとってかけがえのない存在です。

 小学校5年生のときの冬休みのことです。大晦日も「にわ」と一緒にすごし、初めて、初日の出を見ることができました。それも「にわ」と一緒にです。私はこんなにうれしかった正月は初めてでした。そんな幸福感のせいでしょうか、「にわ」のケースにかぎをかけるのを忘れてしまいました。気づいたときには、近くの山の野犬によって無残な姿に変わってしまった「にわ」。私は自分のせいでかけがえのない友をなくしてしまったことにひどい悲しみを覚えました。しかし、私の過ちのせいで死んでしまった「にわ」をそのままにしておくこともできません。涙をこらえて私は「にわ」を庭に埋めました。なれない作業と「にわ」をなくしてしまった悲しみでその日は早く寝てしまいました。

 次の日の朝です。祖母が私をたたき起こしにきました。こんなことは初めてだったので非常に私は驚きました。何事かと思って外を見ると、私が昨日埋めた「にわ」の墓標に赤い花が咲いていました。外見は少しグロテスクでしたが、私はその花に異常なまでに惹かれました。祖母は私の隣で、「なんで一晩で鶏頭が花を咲かすんだろうね」としきりに頭をかしげていました。私にとってはそんなことはどうでもいいことで、「にわ」は生きている。「にわ」の魂は鶏頭の花となって私を見守ってくれている。そう思いました。

 そんなことがあり、私は3年もの間兄弟のように遊んできた鶏の「にわ」の死を受け止めることができました。悲しみも消え鶏頭の花を一日過ごして終わるような日々が続きました。


 



 冬休みも終わりに近づいてきた頃、私の胸の中にふと邪悪な念が浮かびました。「にわ」は、私のせいで死んでしまった。しかし野犬がいなければ・・・。私は山の中に入り、野犬を退治してやろうと、何も持たず単身山の中に入っていきました。それも夕方の薄暗い時間。
 少し歩くと深い森の中。なんの明かりもない山の中で小学5年生の私は一人きり。当然、さびしくなるし、なきたくなる。私はこのまま死んでしまうんじゃないか。そう思ってないた。誰にも届かないことはわかっている私の鳴き声。しかし大声を張り上げてのどがかれるまでないていた。


 どのくらい時間がたっただろうか。声もろくに出なくなり、酷い空腹感とのどの渇き、痛みに襲われ本当に死んでしまうと思っているとどこからか赤い光が飛んできました。不思議と私にはそれが、「私についてこい」そう訴えかけているように感じられました。私はその赤い光についていきました。足はガクガクだったはずなのになぜか疲れを感じなくなりました。
 気がつくと祖母の家の前。祖母は泣いていました。私がいなくなったら娘から怒られてしまう・・・とないていました。私は悲しくなりました。
 ふと、あの赤い光はなんだったんだろうと考えてみました。ひとつの考えが頭に浮かび、それが正解なのか不正解なのか確かめようと「にわ」が埋まっている庭にいってみました。


 奇妙なまでに元気よく咲いていた、鶏頭の花は水分を失って乾ききって倒れていました。



 後で調べてみたのですが、鶏頭の花の花言葉は「色褪せぬ恋」だそうで、私が「にわ」に抱いていた兄弟愛のようなものが「にわ」にも伝わっていたんだととても嬉しい反面悲しくなりました。
by miroguru | 2006-07-20 23:16
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